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【偏愛】Jorja Smithが潤す世界。

  • Umi Yamaguchi
  • 2021年4月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:2021年4月28日




彼女の虜になったのはいつだっただろうか。

奏でる歌声は聴く者の隙を見逃さず、するりと流れ込んでは鷲づかみにしてしまう。 今回は記念すべき初回の連載『私の偏愛』に沿って、そんな愛すべき”彼女”

Jorja Smith(ジョルジャ・スミス)について綴る。



Jorja Smithは1997年、UKウォルソール出身のR&Bシンガーだ。2016年にデビューシングルをリリースして以降、グラミー賞の最優秀新人賞にノミネート、ブリット・アワーズでは新人賞を獲得など、

その飛躍ぶりは著しい。また世界的ブランド「Dior」のメイクアップアンバサダーに起用されるなど、ファッションアイコンとしても注目されている。


初めて耳にしたのは、デビューシングル『Blue Lights』だった。妙な焦燥感に満ちたのを覚えている。憂いを帯びた曲調に、ミディアムなリリカルさが印象的だ。この曲で歌われている「ブルーライト」とは、パトカーの警光灯(イギリスの青色灯)を指していて、用いられたストーリーからは人種差別に対する問題掲示が感じられる。(以下一部抜粋)


There's no need to run 逃げる必要はない Not blue flashing lights 青い点滅灯じゃない If you've done nothing wrong もし何も悪いことをしていないのなら





出身地であるウォルソールで撮影したというMVには、差別社会を表す場面が散りばめられている。

だがあくまで直接的なアプローチではなく、粛々と、そして力強く訴えかけているように思えた。

彼女は確かに”ストリート”を歌っていたのだ。


彼女の感性と、そこから湧き出る歌に惚れ惚れした。まるで水中かのように全てを包まれ、優雅に泳ぐ魚のように爽快感に溢れる。彼女の曲を聴くと、後悔や未練など消えてしまう。

残香として残るのは、前進する覚悟だけなのだ。



私が上京した夏、Jorja Smithの『Be Honest feat.Bruna Boy』がリリースされた。 駆け引きをし合う男女の曲だが、アップビートにBruna Boyの独特な声が響く。彼が歌うアフロフュージョンというジャンルは、ダンスホール、ラップ、R&B等を織り交ぜたスタイルだ。軽やかなギターが、蒸し暑く忙しない夏を支えてくれた。 MVでは、雑多なシャワールームでヘッドフォンをしながらくつろぐJorja Smithに自分を重ね、自室の狭いユニットバスが格好良く思えたりしたものだ。



彼女のファーストアルバム『Lost & Found』に収録されている『Teenage Fantasy』は、”青春の幻想”とも和訳されていた。十代の恋愛について書かれており、相手に夢中になる女性と警告する周囲の様子をソウルフルに歌っている。 当時、好きだった彼に何度も告白し断られ続けていた私には無論、ドンピシャなテイストだった。

止められない衝動や感情がゆえに突っ走ってしまう有り様を、彼女が認めてくれた気がした。


2021年最初のシングルとなる『Addicted』が、3月11日リリースされた。 (ギブアンドテイクであったり)偏った関係について書かれている。研ぎ澄まされたメロディーが際立つこの曲は、ウェブカメラで撮影したというMVとともに公開された。彼女はインスタグラムで「この曲を歌っていると独り言のような気がする」と語っている。 映像内で花火とともにはしゃぐ彼女が歌う、達観した歌詞には思わず涙した。自身の情緒と闘い、もがく数ヵ月を送っていた私にとって、この曲はまさに救世主だった。





きっと魅惑的なルックスは、彼女の内面が反映されているのだろう。彼女の虚ろとも思える目からは濁りを感じないのだ。ナチュラルに、そしてソウルをのせた音は、これからも私の世界を潤していく。

何度あなたに救われ、奮起させられ、認められたか。雨の日を愛せないことも容認してくれるような、その尊い作品に。いつか必ずこの想いを直接届けられる日を迎えたい。

これは『私の偏愛』と呼ぶに相応しい、Jorja Smithへの恋模様とも言えよう。





Umi Yamaguchi


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